ユウ便り

自然界に「ゴミ」はない。すべてが循環する生き方—ニュージーランド・レインボーバレーでの暮らし

先日、ニュージーランドからお二人のお客様:マシューさんとウェイブニーさんをお迎えしました。

マシューさんとウェイブニーさん。ウェイブニーさんは名前の意味から「ナミ」と呼んでね、と気さくに声をかけてくれました。

お二人は今、一年をかけて日本各地を旅しています。
ニュージーランド北島にある農園を仲間に託し、各地で出会いを重ねながら、次に自分たちが何をしたいのかを、ゆっくりと考えている最中なのだそうです。
その旅の途中で、青森の私達のもとに立ち寄ってくださいました。

リンゴの芯は、土へ帰る

お二人の暮らしの根っこにあるのは、とてもシンプルな問いでした。

ゴミという存在そのものが、間違った経済システムの象徴なのではないか

自然界には、本来ゴミというものはありません。
食べたリンゴの芯は土へ帰り、冬には葉が落ちて、また土へ還っていく。
そこに「ゴミ」という概念は存在しないのです。

マシューさんはそう話してくださいました。

この考えを胸に、お二人はこれまで、ニュージーランド北島の各地で「コミュニティ・リサイクルセンター」の立ち上げ・運営を支援されています。
人々が不要になったものを持ち込み、修理・再利用し、リサイクルする。最終的にどうしても埋め立てに回るものを最小限にしながら、再利用品を販売する店舗も併設する。
ーそんな、地域に根ざしたソーシャルビジネスの現場を生み出してきました。

レインボーバレーでの暮らしを語る
美しい写真と共に、お二人の熱い想いをお話しいただきました。

レインボーバレーファームという場所

やがて、夜空の星を見て、風の音が聴こえる場所で暮らしたいとの想いから、都市の中心部から地方へ暮らしの場を移すことになります。

そうしてたどり着いたのが、マタカナという村にある一軒の農園:レインボーバレーファームです。

レインボーバレーファーム
レインボーバレーファーム(マシューさん提供)

この土地には長い物語があります。
1988年、ジョーさんとトリッシュさんという二人が、草ぼうぼうの荒れ果てた土地を手に入れ、「レインボーバレーファーム」と名づけました。お二人はニュージーランドにおけるパーマカルチャー:持続的な農業と、自然と共生する暮らしのデザインの先駆者でした。それから20年をかけて、この農園は800種を超える植物や果樹が育ち、敷地の木で建てた家が建ち、世界中から人が学びに訪れる、パーマカルチャーの象徴的な場所へと育っていきました。

日本との縁も深く、パーマカルチャーセンタージャパンの立ち上げメンバーも、90年代にこの農園で学んだひとりだといいます。


2008年にジョーさんが急逝し、農園は何人かの手を経て、2018年にマシューさんとナミさんのもとへ。
お二人は初めて農園を見てから、わずか5日で購入を決断。そして6週間後には移り住み、今では二組の夫婦、4人で農園を運営しています。
この4人は農園の共同オーナーであり、コハウジングという暮らし方を実践する共同生活の仲間でもあるそうです。

私たちがこうして一年も日本を旅していられるのは、農園を守ってくれている仲間たちのおかげなんです。

レインボーバレーファームの農園の様子
レインボーバレーファームの農園の様子(マシューさん提供)

コハウジング (Co-housing)
各家庭がそれぞれ独立した住まいを持ちながら、菜園や集会所、食事づくりといった一部の暮らしを共同で営む住まい方。1960年代にデンマークで始まった考え方とされ、その後各国へ広がった。
土地や設備を分かち合うことで一世帯あたりの費用負担が軽くなり、人と人とのつながりが保たれて孤立を防ぎやすいメリットがある。

倒れた木が、暮らしの素材に変わるとき

ニュージーランドも日本も、木を取り巻く状況は似ている部分が多いようです。

最初の創設者であるジョーさんとトリッシュさんは、敷地に生えていた木を自ら切り、自ら製材して、家を建てました。使われたのはサイプレス——ヒノキの仲間で、香りのよい木でした。
市販の木材の多くは、水に濡れても傷まないよう薬剤処理が施されています。
けれどお二人は、切ったままの生木を使いました。水に強い木をきちんと選び、適材適所で、木が本来持っている力をそのまま生かす建て方です。
レンガと粘土で建てた家もあり、薪ストーブの熱で家じゅうに張りめぐらせたパイプの水を循環させ、家全体を暖める仕組みも備わっています。
お二人が引き継いでからも、この家に手を加え、より快適に過ごしているそうです。

一方で、近年では新しい悩みも…。
木が育ちすぎ、嵐が来るたびに大きな木が倒れる。その倒木を、どう活かせばいいのか。
倒木を丸太にはできるけれど、それを木材へと製材する手立てがない。せっかく自分たちの土地に木があるのに、必要な木材はお店で買ってこなければならない——。

そんな状況を変えたのが、ターボソーミルの製材機でした。


この製材機を導入した後は、倒れた木を自分たちの手で製材し、友人の台所の材を挽いたり、屋根を葺き、ゲートやフェンス、階段、ゲストハウスまで自らつくってきました。
薪も生産し、周囲の住民にもシェアしながら、倒木を丸ごと活かしているそうです。

ターボソーミルM6-13M
マシューさん所有の製材機(マシューさん提供)

一台のコンパクト製材機が起点になって、捨て置かれるはずだった倒木が、暮らしをかたちづくる素材に変わっていく様子は、聞いているだけでもワクワク!

個人やグループで、小規模でも木材を利用する手段を得ることは、森と木と人が恵みを享受し合える関係づくりの一つの方法ではないかと感じました。

お二人はニュージーランドに戻ったら、新しい仕事のひとつとして、地元の木を製材をしたいと考えているそうです。

ニュージーランドと日本のターボソーミルユーザー
ターボソーミルユーザー同士の嬉しい出逢いでした。

黒い土に、感動して

イベント前日、六戸町を訪れたお二人は、車の窓から見える田畑の黒土に、心を奪われていました。

ニュージーランドには、日本のような黒い土がほとんどないそうです。多くは粘土質で、植物が育ちにくい土壌のようで、コンポストで作った土を畑などに活用されているそう。
だからお二人にとって、私たちが何気なく見ている黒々とした畑の土は、まるで素晴らしい建築でも見たかのような感動の対象でした!

日本の田畑を見ながら、私たちの菜種畑にもご案内しました。
この地域で菜種がどのような意味を持つ作物なのかや、私たちの栽培〜搾油までのプロセスについてお話ししながら、持続可能な農業について意見を交わしました。

菜種畑を見学
菜種を手にしながら、食・農・暮らし・風土…と話は広がります。

暮らしを丁寧にすることが、未来をつくる

トークの終わりに、ナミさんが語ってくれた言葉が印象深かったです。

社会のしくみは、たいてい「上から」降りてきます。政府がこう生きなさいと決め、人々がそれに従う。

けれど本当に大切なのは、地に足をつけて暮らす私たち一人ひとりが、「こんなふうに生きたい」と願い、その小さな実践を分かち合っていくことではないか。

世界が不安定な時代だからこそ、それぞれが持つスキルを大切にし、シェアしながら生きていく。
その積み重ねが、より良い世界をつくっていくのではないか。

丁寧に暮らす人たちこそが、未来を支えていくはずだ。

イベントの参加者同士の意見交換も盛り上がりました。
参加者同士の意見交換も盛り上がりました。

樹が生きた日々を、木と生きる日々へ。
私たちユウビレッジが大切にしてきた想いと、海の向こうの森で営まれてきた暮らしとが、静かに重なり合ったように感じた一日でした。

マシューさん・ナミさん、ご参加いただいた皆様、通訳と会場を提供いただいた見吉様、本当にありがとうございました!

イベント参加者の皆さんと
イベント参加者の皆さんと

最後に、お二人からのメッセージ

ニュージーランドに来た際は
ぜひ私たちの農園:レインボーバレーファームに泊まりに来てください!

レインボーバレーファームでは、世界中からボランティアを受け入れているそうです。
滞在しながら農園の仕事を手伝い、暮らしを分かち合う時間を体感できます。

レインボーバレーファーム ウェブサイト