積雪で倒木し伐採したサクラを、一枚板のテーブルに加工しました。
今回の主な作業は、移動式簡易製材機ターボソーミルによる製材と、職人による加工です。
地域材の活用事例として、一枚板テーブルができるまでを、流れを追ってをご紹介します。
薪にする前に、考えたこと。
青森県のあるお宅にあった、サクラ。
ある冬、雪の重さに耐えかねて折れてしまったため、伐ることになりました。
今回のご依頼主は、その伐採した木を「どうにか活かす方法はないだろうか」と考えました。

木は、燃やせば暖かさを与えてくれます。
それも、木の大切な役目のひとつです。
けれど今回は、
このサクラに、もう一度、別の役目を託すことができないか。
これからも、その木を感じられる使い方をしたい。
と願っていました。
「このサクラ、テーブルにできないかな?」
そんなご依頼主の元へ、神奈川にお住まいで、毎年このサクラが咲くのを楽しみになさっていた親戚の方から声がかかりました。
「このサクラ、テーブルにできないかな?」
長年、咲いているサクラを写真で送ってもらい、親しみのあったこの木を、新築中のご自宅に使いたいと一報があったのです。

このサクラは、長い時間そこに立ち、家族や親戚に見守られてきた庭木でした。
サクラのある青森と、現在暮らしている神奈川とで、物理的には離れていましたが、この木を通して重ねてきた精神的なつながりを、ずっと感じていたそうです。
お話を伺った際、このサクラには「効率」や「価格」だけでは測れない価値を、私達も感じました。
ただ製材するのではなく、想いを受け取る
この仕事に取り組むにあたり、まず考えたのは
「どんな製品をつくるか」ではなく、
「この木を、どんな形で暮らしにつなぐか」でした。
ただ板を挽いて、加工して、納める。
それも一つの仕事の方法です。
けれど今回は、
「この木を選んだ理由」「この木に託した想い」を受け取ることを大切に、想いをつなぎ、これからも木のぬくもりを感じてもらえるように加工したいと考えました。

ターボソーミルで一枚板を挽く
まずは、丸太を製材していきます。
製材には、移動式製材機「ターボソーミル」を使用しました。

この木が持つ表情を活かすため、丸太の幅のまま、一枚板として挽きました。
一枚板にすることで、木目や曲がり、節や虫喰いの跡など、時間を重ねてできた個性が製品の表情になります。

ターボソーミルは通常、丸鋸刃を装着して製材しますが、今回は一枚板を挽ける「スラバーアタッチメント」に付け替えています。
150cmまでの幅で切断できるソーチェーンで、大抵の大径木にも対応します。
製材した中から、板のサイズや状態を見て、最終的に加工する木材を選びます。

薪ボイラーの力で乾燥する
製材機で挽いた板は、薪ボイラーの熱を使用した温風暖房で乾燥させました。
本来は、製材した後数年は天然乾燥させる必要がありますが、今回は納期までの時間が限られていたため、温風で短期間に木材の含水率を下げる方法にしました。

職人の手で、暮らしの中へ
乾燥させた後は、人の手で整え、使うための形に仕上げていきます。
加工の工程は、家具職人さんに依頼しました。

木の状態を見ながら、削りすぎず、残しすぎず…。
刃物で木肌をなぞって表情が一変する様子は、見ていてとてもワクワクしました。
加工方法や仕上げの程度など、どのような仕上がりにすれば長く使っていただけるのか。
これからも「使い続けられること」を大切に、加工してもらいました。

暮らしに届く、その瞬間
完成したサクラの一枚板は、新築中のご自宅へお届けしました。
今回納めたサクラは、カウンターの天板、キッチンの腰板として使用されるそうです。
日々触れるところに使用していただけるので、暮らしの中でサクラをたくさん感じていただけるのではないかと思います。


かつて青森にあった一本の木が、
いま、神奈川県の暮らしの中で、家族の時間を支える存在になりました。
お客様からも木が形を変えて使えることになり、「川上(山の木)から川下(木材利用)までつながりました。」と、大変喜んでいただきました。
この瞬間に立ち会えることが、この仕事を続けていくモチベーションの一つになっています。
樹が生きた日々を、木と生きる日々に。
木の役目は、燃やせば一度きりです。
けれど、暮らしに使えば、何十年も生き続けます。
今回のサクラも、姿を変えて、これからの時間を重ねていくことでしょう。
私達は、ただ製品をつくるのではなく、
樹として重ねてきた時間を、人と暮らしの中で生きる木製品として、愛着を持っていただけるようお手伝いすることを大切にしていきます。

