製材

スギ無垢フローリングの製作工程と無垢フローリングのメリット・デメリット

はじめに

日本には豊かな森林資源があります。特にスギは各地で植林され、身近な樹種のひとつではないでしょうか。
今回は、持ち山のスギをフローリング材として活用したいとのことで、伐採から加工までをご依頼いただきました。

本記事では、地域のスギ林を活用する一例として、スギの伐採〜製材〜フローリング材への加工の過程をご紹介します。
また、無垢フローリングのメリット・デメリットを5点ずつ解説します。

無垢フローリング材の製作工程

1.木材の伐採

今回のご依頼主様の持ち山に伺い、伐採に適した木を剪定しチェンソーで伐倒します。

スギ林での伐採作業

2.製材〜天然乾燥

伐採された木材は使用用途に合わせて製材されます。

製材後は、品質を保つために乾燥させます。
一般的には乾燥機にかけてすぐに次工程へ進めますが、天然乾燥の場合、半年から数年かけます。長い時間、天日や風雨に晒されることで、木材の内部まで均等に水分が抜け、製品としての安定性が向上します。

床板用に製材したもの
乾燥中のフローリング材

3.フローリング材へ加工

乾燥を終えた材木は、ご注文をいただいてからフローリング材に加工します。
今回は30mm厚と12mm厚の2種類に加工します。

モルダーという専用機械だと、板材の四方のカンナがけ+サネ付けが一度に行えます。
弊社では中古のモルダーを入手したのですが、所持所によりまだ稼働しておらず、今回は時間のかかる原始的な方法で作業しました。

板材の四方をカンナがけ

乾燥させる段階では、納品サイズより若干大きいサイズで保管しています。
そこからカンナをかけて、少しずつ納品サイズに調整していきます。
1枚につき20往復くらい板をひたすらカンナに通していきます…

使用するかんな盤は、弊社代表が前職の公務員時代にボーナスで購入した、ヤフオク!の中古品です。パワーが弱く、一度に削れる量が限られるため、何度も何度も板を通す作業を繰り返します。

工程の前後で板表面の色味が全く異なります。
ひとつひとつ違う表情の木肌と美しいツヤが現れるのを見ているとワクワクしてきます!

規定サイズに調整

前工程である程度調整したものを、最後に納品サイズでカンナに通して仕上げます。

ガサガサしていた表面は、カンナを通すとツヤのある木肌になります。

サネをつける

フローリングを施行する時に板同士が噛み合うように、サネと呼ばれる凹凸の接合部をつくります。
これまでは小溝カッターで実加工をしてきましたが、今回は、新たに入手したルーターで凸面・凹面それぞれの加工を行いました。

両側面にサネと呼ばれる凹凸の接続部をつくります。

完成したフローリング材

スギのフローリング材|施工する際は、ジグソーパズルのように凹凸部分が噛み合い固定されます。 
スギのフローリング材(凹面|厚さ30mm)
スギのフローリング材(凸面|厚さ30mm)
スギのフローリング材(厚さ12mm)
フシあり・なしでも印象が違います
カンナ屑が大量に出ました!譲渡先を考えなければいけません…

無垢フローリングの施工

今回、床板の施工は大工さんが行います。
30mm厚のフローリング材を納品した際、作業中だった大工さんが「こんな厚い床板を取り付けるのは久々だ!」と話していました。

現在流通しているフローリング材は、12mmや15mmなど半分程度の厚みのものが主流なので、厚さが30mmもあるフローリングを取り付けたことのない大工さんも多いかと思います。

大工さんに小言を言われるかとドキドキしながら納品したのですが、めったにない機会を楽しむように床貼り作業を進めていただいたので、ホッとしました。

スギが生育し伐採するまで長い時間がかかります。
しかし、じっくり手をかけて生まれた製品は、これからはフローリングに形を変えて、ご依頼主様の暮らしの中で時間を共にしていきます。
今後も永くご愛用いただけると嬉しいです。

無垢フローリングの特徴

一般住宅に使用されるフローリング材は大きく2つ、無垢フローリング複合フローリングがあります。

複合フローリング

複合フローリングとは、一般的に普及しているフローリングで、下地の合板の上に薄くスライスした天然木等を貼り付けたものです。
合板等を使用しているため、温度や湿度などの環境変化に強いのが特徴です。

無垢フローリング

無垢フローリングは、一般的な複合フローリングと比較すると、厚さが1.5倍以上あり(無垢材は通常15mm厚)、自然な木の風合いをそのまま感じられるのが特長です。
経年変化により色味が深まり、独特の味わいが出ることも無垢材の魅力の一つです。
メンテナンスとして定期的なワックスがけやオイル塗りが必要ですが、適切に管理すれば数十年にわたって使用することができます。

無垢フローリングのメリット

無垢フローリングのメリットを5点紹介します。

1. 自然の美しさと独特の風合い

無垢フローリングは、自然の木をそのまま使用しているため、木目や色合いが一枚一枚異なり、独特の風合いが楽しめます。
また、時間が経つにつれて色やツヤが深まり、自然な美しさが増していきます。

施工直後のスギ板フローリング|赤みに強弱があります

2. 耐久性と長寿命

適切にメンテナンスされた無垢フローリングは、非常に耐久性が高く、数十年から百年以上も使用することが可能です。
浅い傷や多少の汚れが付いても、研磨や自然塗料等を塗装することで新たな美しさを保てるため、長期的に見てコストパフォーマンスに優れています。

3. 快適な室内環境

無垢材は自然の木のため、湿度の調節効果があります。適度に湿気を吸収し放出するため、室内の湿度を快適なレベルに保つのに役立ちます。

樹種にもよりますが、床板の適度な厚みは断熱性を高く保ち、冬は暖かく、夏は涼しい室内環境を提供します。
一例ですが、床下は同じ下地でも、フローリングの種類によって表面温度が全く異なります。
特に冬期は、複合フローリングはひんやりと冷たいのですが、無垢フローリングはそこまで冷たく感じることはありません。子ども達も無垢フローリングの方を選んで廊下を歩いていたりしています…

上:複合フローリング|下:無垢フローリング(スギ, 30mm厚)
特に冬期は、床の温度差が歴然です。

4. 環境への優しさ

無垢フローリングは再生可能な天然資源を使用しており、複合フローリングに比べて環境負荷が低いです。
また、廃棄する場合でも自然界に還るため、エコフレンドリーな選択といえます。

5. 健康面での利点

化学物質を含まない無垢材は、空気の質を保つためにも役立ちます。
表面塗装の選択によってはVOC(揮発性有機化合物)の放出がほとんどないため、アレルギーを持つ人や小さな子どもがいる家庭でも安心して使用できます。

また、裸足で過ごすことは脳への良い刺激を与える機会にもなります。
例えば床を素足で踏みしめることで、足裏の感覚神経が脳へ多様な感覚信号を送り、正確な筋肉の反応を引き出すそうです。
特に幼児期は神経発達が活発な時期なので、日常的に安全な素材の床で裸足で過ごし、さまざまな刺激を足裏から受けることは、成長の一助にもなるでしょう。

無垢フローリングのデメリット

無垢フローリングのデメリットを5点紹介します。

1. コスト

無垢フローリングは高品質な天然木を使用しているため、一般的な複合フローリングに比べて初期コストが高くなります。
特に、ウォルナットや希少な樹種を使用する場合や特殊な加工を施した場合は、さらに価格が上がることがあります。

2. 取り扱いの難しさ

無垢材は自然素材であるため、温度や湿度の変化に影響を受けます。
季節の変動によって、伸縮や反り、割れが生じる可能性があります。これを避けるためには室内の環境をなるべく一定に保つ必要があります。
また、水濡れに弱く、水分が染み込むと膨張や変色を起こし、シミになってしまうことがあります。

樹種によって木の硬さは異なりますが、軟らかい木の場合は凹みや傷がつきやすいものがあります。

3. メンテナンスの手間

無垢フローリングは定期的なメンテナンスが必要です。
表面の傷や汚れを防ぐために、ワックスがけやオイル塗りを定期的に行う必要があり、これには時間とコストがかかります。

傷がついた場合の修復は、複合フローリングは手軽に補修できるキット等が販売されていますが、無垢フローリングは研磨等の作業を自分で行う必要があり、手間や時間がかかる場合があります。

4. 色の変化

無垢材は時間が経つにつれて自然に色が変わります。
これは「経年変化(エイジング)」と呼ばれ、無垢材の魅力の一つですが、色の変化を好まない方にとってはデメリットとなることもあります。
特に直射日光が当たる場所では色褪せが顕著になることがあります。

スギの無垢フローリング|施工後3年経過

5. 重量

無垢フローリングは一般的なフローリング材に比べて重く、取り扱いや設置において特別な配慮が必要です。
重量があるため、設置する建物の構造を考慮する必要があります。

無垢フローリングの特徴 まとめ

上記のデメリットを考慮しつつも、無垢フローリングの持つ自然の美しさや温もりは、多くの人にとって魅力的であり、適切な管理とメンテナンスによって長く愛される素材になります。

無垢フローリングの購入費用

無垢フローリングの購入価格は、複合フローリングよりも高価ですが、2018年のデータによると、長期的に見るとその耐久性と再利用可能性から、総コストは複合フローリングよりも低く抑えられることが分かっています。

導入コストは高いものの、その後のメンテナンスや取り替えが少なく済むため、経済的にも合理的な選択と言えるでしょう。

まとめ

無垢材を使用したフローリングは、その美しさ、耐久性、環境への優しさから、多くのメリットをもたらします。
地域の木材を使用した家づくりは、地元経済への貢献や環境負荷の低減にもつながります。

また、その土地で育った木は、その土地の気候への耐性があります。
例えば、夏は湿度が高く冬は寒さが厳しい場所で育った木材は、その土地の寒さに対して断熱性があったり、優れた吸湿性があったり、気候に適応しやすい特徴を持っているものがあります。それらを適材適所で活用する方法として、建築材やフローリングは有効です。
さらに従来の木造建築技法と組み合わせることで、耐久性が高く快適な住空間をつくることもできます。

無垢のフローリングを選ぶ際は、これらのポイントを考慮して、長く愛される家づくりを目指してみてください。

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床材の厚さの違いをご体感いただける展示場へのご案内も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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