近年、環境にやさしく経済的な暖房・給湯設備として、薪ボイラーが注目されています。
特に寒冷地では、安定した暖房性能が求められます。
弊社では、昨年度から株式会社森の仲間たちが開発している家庭用小型薪ボイラー(寒冷地仕様)の試験運転を実施しています。
本記事では、その様子や薪ボイラーの特徴について詳しくご紹介します。
1. 家庭用薪ボイラーとは?
薪ボイラーは、薪を燃焼させてボイラー機体の周囲を巡る水を熱で温め、その温水を蓄熱タンクで保温しながら、暖房や給湯に利用することができる設備です。

薪を燃やして発生する熱を効率よく活用できるため、薪を自給できれば灯油ボイラーや電気給湯器と比べて燃料費を抑えられるのが大きなメリットです。また、化石燃料に頼らずに済むため、環境負荷の軽減にもつながります。
2. 今回試験運転した寒冷地仕様モデルの特長
弊社で森の仲間たちさんが自社開発した薪ボイラーを入れたいと思ったのが、2年前。
森の仲間たちが開発した、国産の家庭用小型薪ボイラーの寒冷地仕様モデルの導入を検討する中で、寒冷地であるがゆえの問題点が出てきました。
そこで、北国の寒い冬でも快適に使用できる薪ボイラーを一緒に開発することとなり、昨年と今年の2年間で寒冷地での試験運転を行なっています。

特に寒冷地では、長期間低温の環境下での安定稼働が重要です。
そのため、通常モデルに次のような工夫が施された新モデルが開発されることとなりました。
■ コンパクトだけど、大容量の薪投入スペース
ご家庭に設置しやすい大きさながら、一度に大量の薪を投入でき、
8~10時間以上燃焼
■ 燃焼効率の向上
薪の投入時から残り少なくなった時まで、効率よく燃焼させ、しっかりと熱を生み出す
■ 凍結防止対策
凍結防止運転やタンク内の配管への電熱帯の施工など
■ 自動燃焼制御機能
適切な燃焼に必要な空気量や火力調整を、薪ボイラーのシステムが自動で調節
■ 太陽熱温水器と連携したシステム構築も可能
エコキュートや既存の灯油ボイラーとの併設も可能
このように、寒冷地仕様の薪ボイラーは、厳しい寒さの中でも安定した燃焼と暖房・給湯ができるように設計されています。
3. 試験運転の様子と結果
実際に薪ボイラーを設置し、2025年2月に試験運転を行いました。
設置環境
今回の試験は、最も寒さが厳しい時期である2月に行いました。
設置した場所は、住宅の屋外にある薪ボイラー専用スペースです。
屋外ではありますが、四方を簡易に壁で囲っており、風雨にはさらされない場所に設置しています。
外気温は氷点下まで下がることがあり、一般的な給湯設備では凍結リスクが高い環境です。
薪ボイラー



蓄熱タンク

周辺機器

使用した薪と燃焼時間
使用した薪
薪は広葉樹(ナラやケヤキ)を使用しました。
これらの薪は比較的青森では一般的に入手できる樹種です。
樹種の違いですが、広葉樹は密度が高いため火持ちが良く、燃焼効率が高いです。
一方針葉樹は、密度が低く比較的着火しやすいため、焚き始めに適しているとされています。
薪の樹種での燃焼時間の違い
試験運転では、薪がほぼ燃え尽きるタイミングで薪を投入しました。
今回は、ナラ・ケヤキ・スギの3種類で追加投入の都度樹種を変えて、燃焼時間を比較してみました。
その結果、薪を満タンまで投入した際の燃焼時間は次の通りでした。
ナ ラ:約8〜10時間以上
ケヤキ:約7〜9時間以上
ス ギ:約6〜8時間以上
これくらいの燃焼時間を維持できるということは、薪の投入は1日2回程度で済みます。
寒い冬はできるだけ外には出たくないのですが、2回だけなら頑張って薪を入れられそうですよね!
樹種の違いでの燃焼時間の違いは多少ありましたが、針葉樹でも長時間燃焼が維持されたのは意外な結果でした。
薪ストーブほど薪の種類に気を遣わなくてもいいとなると、薪を準備する際のハードルが少し低くなるかもしれません。

暖房・給湯の性能
試験運転時は、室内の暖房・給湯システムも稼働させました。
この間、室内の温水暖房と給湯に必要なお湯を安定して供給することができました。特に寒い朝でも、前日の燃焼による余熱が残っており、追加の薪を投入するだけで短時間で適温に達しました。
結果として、外気温が氷点下になっても室温は常に20℃以上を維持することができました。また、お風呂や台所での給湯も安定しており、使用中の温度変化もほとんどありませんでした。
また、暖房のリモコンがタイマー付き(オプション品)のため、例えば寝ている時間帯の0時〜4時までは暖房をオフにして、起床の2時間前から暖房をオンにすることができます。これにより、蓄熱タンクの熱を温存しながら利用することが可能です。
なお、石油やガスボイラー(以降、化石ボイラー)と併用することも可能なので、薪をくべることが難しい時やタンク内の水温が不十分だけれどお風呂やシャワーを使用したい時などは、化石ボイラーで加温するなど、柔軟な運用ができます。
居間【暖房】
居間では、2種類の暖房設備を配備しています。



浴室 【給湯】【暖房】


4. 薪ボイラーの使用感
操作性
開発中のモデルは自動燃焼制御機能がついているため、薪ボイラーの燃焼操作は非常にシンプルです。
適切な火力調整は薪ボイラーのシステムにお任せして、薪をセットして着火するだけで長時間安定した暖房・給湯が利用可能になります。
使い勝手のよさ
暖房
薪ストーブよりも薪を投入する回数が少なく済み、家全体を均一に暖めることができます。
特にパネルヒーターは、空気を汚さず包み込むような優しい暖かさを保つことができます。
給湯
給湯の使用容量に見合った蓄熱タンクを備えれば、日常生活に必要なキッチン・浴室・洗面等の給湯は、灯油・電気の給湯と変わらず使用できます。
暖房・給湯ともスイッチひとつで操作可能で、灯油・電気・太陽光などの既存設備との併設もでき、操作性も変わりませんでした。
燃料コスト
使用する薪を全て購入する場合は、年間10万〜20万円(年間5〜10㎥使用すると仮定)ほどのランニングコストがかかり、灯油や電気と比較すると割高になる場合があります。
ご自身で薪を調達できたり、既存のボイラーシステムと併用したりすることで、ランニングコストを抑えることはできます。
ご家庭の使用頻度や環境を考慮して、薪ストーブの使用割合を計画してみてもよいかと思います。
また、薪の保管スペースや保管場所からボイラーまでの薪の運搬ルートの確保も考慮すると、導入後の負担が軽減できるでしょう。
専用スペースが必要
灯油・電気ボイラーと比較すると、薪ボイラーの設置にはある程度の広さの専用スペースが必要です。
薪ボイラーと煙突のほかに蓄熱タンクも設置し、できれば室内(または半屋内)で場所を確保することになります。
一般的な給湯ボイラーよりもスペースが必要になるため、設置前にスペースを確保できるかも検討する必要があります。
5. 家庭用薪ボイラーの導入を考えている方へ
導入までの流れ
- お問い合わせ・相談:導入を検討している場合は、使用用途や設置場所の希望を伺い、施工内容を確認します
- 設置場所の確認:設置希望場所がボイラーの設置に適しているか実際に確認します
- 図面作成と見積り:図面で配管等も含めて検討し、費用や設置条件をご提案します
- 契約:図面と見積りに了承いただいた上で、契約を締結します
- 設置工事:工事日を相談の上、施工します(1週間程度)
- 運転確認と導入時レクチャー:初回運転を行い、薪の焚べ方や使用方法を説明します
価格・補助金について
薪ボイラーの導入費用は、モデルや設置環境によって異なります。
一部自治体では、薪ボイラー導入に対する補助金制度がある場合がありますので、事前に自治体のホームページなどで確認しておくとよいでしょう。


薪ボイラーのよくある疑問
本当に暖かいの?
実際の試験運転でも、外気温が氷点下の状況で室温20℃以上を維持できたため、十分な暖房性能があることが確認できました。
薪を準備するのは大変?
自分で山林から調達したり、知人に譲ってもらったり、丸太で購入し自分で薪割りしたりすると、費用負担を抑えながら調達できます。
自身で薪割りをするのは大変ですが、体を動かすことでリフレッシュできたり、家族のイベントとして取り組んだりすると楽しんで準備できるかもしれません。
自分で準備するのが大変な場合は、すぐ使用できる状態の薪を購入することもできます。
設置場所はどこでもいいの?
基本的には屋外設置が推奨されますが、十分な換気設備があれば屋内設置も可能です。
設置には専門業者のアドバイスを受けると安心です。
6. お問い合わせ・見学について
現在、試験運転を行っており、導入を検討している方には実際の運用状況を見学していただくことも可能です。
薪ボイラーの実際の暖かさや使い勝手を体感したい方は、展示場の設備をご案内することもできますので、お気軽にお問い合わせください。
薪ボイラーは、環境にやさしく、経済的で、寒冷地でも安定した暖房・給湯ができる優れた設備です。ぜひこの機会に導入をご検討ください!